ままぱれ

p4c=子供のための哲学

危機を乗り越え、新しい時代を切り拓いていくために

「大人だけじゃなくて、子どもも意見を言いたいです」
―突然の休校を告げられた場所に、偶然にもカメラがありました。4月18日に放送されたNHKのETV特集「7人の小さき探求者~変わりゆく世界の真ん中で~」は、p4c※ぴーふぉーしー(philosophy for children=子どものための哲学)に取り組む小学6年生を追った番組。その手法を研究・実践されている宮城教育大学の学長付特任教授野澤 令照先生にお話を伺ってきました。

子どもたちの心の底にある想いは、大人になんか負けていません。
探究者として、深く考え、ずっと考え続ける子どもたちの姿こそ、p4cが目指すものです。

先生とp4cの関わりを教えてください。

 これまで生涯教育やキャリア教育、防災教育などに関わってきました。宮城教育大学は東日本大震災の教育復興を担う「教育復興支援センター」を平成23年に立ち上げましたが、退職を機に平成25年からこちらに来ました。
当時は被災地の復興もまだまだ進まない中、首都圏からも多くの学生たちがボランティアに入っていたので、そのコーディネートなどをやっていました。
 p4cは60ヶ国以上で取り組まれていますが、私たちが取り入れたのはハワイで開発されたものです。復興支援でワイキキ小学校と仙台の若林小学校が繋がり、平成25 年の6月に交流事業で仙台を訪れたワイキキ小学校の先生方を沿岸部の被災した小学校に案内しました。その時に若林小学校で見せてもらったのがp4cでした。子どもたちがとても楽しそうに活動しているのを見て、これって何か可能性があるのではないかと直感しました。その後、上廣倫理財団の支援をいただきながら活動を進め、平成29年に上廣倫理教育アカデミーが設立されました。

p4cとはどういうものなのですか?

 一番の目的は、考える力を育んでいくことです。何かを「不思議だな」と思う心が学びの源泉であると考え、それを生かしてより深く考える力を子どもたちに身に付けさせるのがp4cです。これまでの日本の教育は、教師が教えることを覚えるのが中心で、子どもたち自身の好奇心から始まる本来の学びの姿からはかけ離れていました。
学ぶ目的が自分の中に明確にないから、大学に入った途端にそれまでに学んだ知識がいらなくなってしまうんです。今回のコロナが象徴的ですが、こうした難しい課題を乗り越えて新しい世界を拓いていくには、常に何かを考え続けていく力、ものを創り出していく力が必要になってきます。
 p4cでは、最初にみんなと一緒に考えてみたい問いを立てます。「若いって何歳から?」「自分は今、自由か不自由か」などいろいろ出た問いの中から、どれを話し合うか選びます。話し合いは円座になって座り、コミュニティボールを回しながら進めて行きます。p4cにはルールがあり、一番重要なのは、「誰がどんなことを話しても、否定したり、馬鹿にしたりしない」ということです。それから、できるだけみんなが話せるようにすること。自分の考えがまとまらない時は、ボールをパスしてもいいということ。ボールを持っている人だけが話ができることなどがあります。すると、話が苦手な子やあまり活発でない子でも、きちんと話せるんです。子どもたちに感想を聞くと、楽しいだけでなく、しっかりと人の話を聞くことが、自分の考えを深めていくうえで役に立つことを実感しているようです。p4cは、現在、宮城県内で60校以上の小中高、特別支援学校で実践されています。

話し合いで使用するボール

p4cへの思いを聞かせてください。

 p4cは、教科や領域に捉われずに、子どもたちが自由に問いを立てて進めていくのが基本なのですが、今の日本の教育制度で、そういった時間を確保することはほとんど不可能です。そこで、教科や領域のなかにp4cを組み入れることから始めました。私たちは、p4cが大切にしている対話や探究が、全ての教科・領域の学習の基盤になると考えています。その思いを伝えるために、私たちが取組んでいることを「探究の対話(p4c)」と呼んでいます。
 p4cでは、普段起きないようなことが起きます。震災で被災した学校の子どもたちが、ある時震災の話題になって対話が続いたことがありました。そこで語られたことは、それまでタブーとされていた震災当時の生々しい話だったそうです。
 p4cの魅力の一つは、こうしたお互いが安心して話せるセーフティのある場を生み出すことだと思います。

ETV特集「7人の小さな探求者~変わりゆく世界の真ん中で~」は、コロナによる休校への子どもたちの言い分を伝えていました。

 元々は、災害との関わりのなかでp4cがどんな役割を果たすのかということで、東日本大震災の被災地だった気仙沼市の小泉小学校で取材をしていました。「子どもたちの自然な姿を撮りたい」と、NHKのディレクターやスタッフの方々は何度も学校に通って、取材なしで子どもたちと触れ合っていました。本来の予定では、4・5月も取材して7月放送の予定だったんです。首相が全国の小中学校に臨時休校を要請したのは2月27日の夕方。「来週から休み」と言われた瞬間を撮っていたのは、本当に偶然でした。
 私は半年前に、この子どもたちの最初のp4cを見たのですが、番組でその成長した姿を見てとても驚きました。最初はみんなの前で話せなかった子が表情も全く変わっているし、饒舌とは言えないけれどしっかりと話すようになっていました。そして子どもたちの心の底にある想いは、大人になんか負けていません。探究者として共に考えるとき、そこでは大人も子どもも関係ありません。深く考え、ずっと考え続けるというp4cの本質的な姿を伝えてくれたと思います。

親子一緒に行われたp4c

ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 今回のコロナのことでは、皆さん本当に大変だったと思います。でもこの経験があったからこそ、新しい時代に繋がるものが見えてくることもあるのではないでしょうか。決してマイナスだけに感じず、それをプラスに変えることを心掛けてほしいと思います。そして改めて、子どもたちの持つ力を信じてあげてほしいのです。子どもにも人格があり、大人以上に考えていることもあります。それを受け止めてあげることが、親御さんも含め周りにいるすべての大人の責任なのではないでしょうか。
 子どもの好奇心を大切にして、一緒に楽しんでほしいと思います。「これって何?」と聞かれた時に大切なのは、気づいたことをほめてあげること。それだけで「頑張ろう!」という気持ちになります。子どもの気持ちを受け止めて、どう生かしてあげるかがとても大事ですね。その前提として、大人がご家庭のなかで仲良くすることが大切です。まだまだストレスフルな状況が続きますが、お母さんの不満やストレスを解消するのはお父さんの出番です。私もそうでしたが、ステイホームでお母さんの日々の大変さに気づいたことを忘れないようにしたいですね(笑)。

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