ままぱれ

できることを見つけるポジティブさこそ未来へ繋がる旗印

できることを見つけるポジティブさこそ未来へ繋がる旗印

できることを見つけるポジティブさこそ未来へ繋がる旗印

まるでSFアニメに出てくるような「OriHime」という分身ロボットをテレビで見ました。身体を動かせない人がPCからそれを動かして、学校の授業を受けたり会社の会議に参加したり、まるでコロナでのリモートワークの先取りのよう。重度の障害を持つ方々の教育や、その方々とどう接していけばいいかお伺いしてきました。

先生の研究・活動について教えてください。

 重度・重複障害と言われる人や、肢体不自由がとても重く医療的ケアも必要とする人の学習支援やコミュニケーション支援を研究しています。県内のそういった障害のあるお子さんのご自宅に週1回程度伺い、一緒に活動してそれを実践研究としてまとめています。大学の授業では、肢体不自由のある子や病気の子の教育について講義し、特に障害の重いお子さんの教育をどう考えていくかについて力を入れています。
 母が特別支援の教員をやっており、熊本大学での恩師に子どもの時からお世話になっていました。障害の重い人と一緒にキャンプに行くなど、その先生が大学で行っていた活動に参加させてもらっていたので身近なことでした。
 宮城教育大学は、実際にそういったお子さんと関わりながら研究されている先生が多いです。しかしながら、なかなかこの分野に興味を持って来る学生さんはいないので、在学中に少しでも興味を持ってもらい、その教育ができる先生を育てなければという使命感があります。

具体的にどういった支援・指導をされるのでしょうか。

 診断名でいうと脳性麻痺や筋ジストロフィー、先天性のミオパチーのお子さんで、私がよく使うのはスイッチを使っての操作や視線でパソコンを動かすセンサーです。そういったものを使って、どういったことができるか、どこまでわかっているのかを探すような関わりです。

 ミオパチーのお子さんは、お会いした時から体はほとんど動かせず、手と指がちょっと動かせるくらいでした。言葉は理解していそうだけれど、何をどの程度理解しているかわからないと相談され訪問するようになりました。そのわずかな手の動きで、スイッチを押すと玩具が動くことに気づかせることから始め、次にパソコンを操作してもらったところ、文字を理解していることがわかりました。それで五十音表のソフトからひらがなを選べるようになり、今はiPadを操作してメールのやり取りもしています。お母さんにお伺いしたところ、お風呂の壁にひらがなや絵を貼って、見せたり聞かせたりしていたとのことでした。私が何か教えたというより、持っているものを引き出す方法を一緒に作ったような形です。どのやり方がいいと決まっているわけではないので、関わりを持ちながら、一人ひとりに合った方法を探っていきます。

スイッチを押すと動く玩具

毎年開催されている「ひらめき☆ときめきサイエンス」で、「音声会話も手話もできない人と話をするにはどうしたらいいでしょうか?」というのをやっておられますね。

 これは技術教育の水谷先生の講座で、音声出力コミュニケーションエイドというのですが、スイッチを押せば録音しておいた音声が再生される簡単な装置を作ります。私たち特別支援の教員は「こういう子がいたら、自分はどう手伝ってあげたらいいのかな」と障害への理解に繋げる話をします。

スイッチで画面を動かして問題を解いていく

 障害の重い人たちに対しては、子どもたちは自然にサポートしてくれます。私の子どもたちも、訪問しているお子さんたちが「とっておきの音楽祭」などに出る時に連れて行って挨拶させています。最初はびっくりしたようでしたが、「この子はこういう子」のようにニュートラルな捉え方をしています。あまり難しく考えず、小さい時から関わらせてみるのがいいのかもしれません。知らないと、親御さんも含めて「体が動かせなくて可哀そう」と思ってしまうかもしれませんが、普通に生き生きとしている姿を見れば、印象が変わると思います。


その子なりの在りかたを認めることで印象は変わっていくと思います。
例えばその子が何が好きかや、何をしていると楽しそうかなどポジティブな面を一緒に考えていきましょう。

子育てには参加していますか。

 「手伝っています」ではなく、「子育てしています」と言っても怒られないと思います(笑)。朝は私の担当で、妻も働いているので、私が早く帰れる時には家のことも全部やります。
洗濯とか、おむつやお風呂も全部分担してやっています。コロナの影響で4月頃は保育園も自粛、私も在宅勤務で、うちで子どもふたりをずっと見ているというのは、子どもたちもきつかったと思います。5月くらいから保育園に行ったのですが、不安な状況のなかで子どもたちを見てくれた先生たちにはとても感謝しています。
 今回のコロナで「リモート」や「オンライン」が注目されましたが、病気の子どもたちの教育ではすでに使われてきました。その知見がこの状況で様々な支援学校に広がり、遠隔でどこまで授業を高められるかと各地の先生方が頑張っています。なので病気の子どもたちの教育も、さらに工夫されていくのではないかと思います。

ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 私たちの障害の重いお子さんたちとの関わりは、その子が何ができるかではなく、その子がその子であることが素晴らしいというところからスタートしています。何かを教える、指導するというのではなく、その子なりの素晴らしさ、持っているものを見つけていくような視点で関わっていくのがいいのかなと思います。
 いわゆる発達障害のお子さんも含めて、できないことや周りと違うことが目立つと親御さんもつらいと思いますが、その子なりの在りかたを認めることで印象は変わっていくと思います。例えばその子が何が好きかや、何をしていると楽しそうかなどポジティブな面を一緒に考えていきましょう。私たちも、障害の重いお子さんと関わりながら、ネガティブなことを数えているとキリがありません。だからポジティブな面を考えていく。もしかしたらそういった視点は、いろいろな方に生かせるのかなと思います。
 7月に京都で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性の嘱託殺人事件がありました。後天的にできることができなくなっていく絶望感は計り知れないので、今回のご本人の「死にたい」という気持ちは他人が口出しできるものではありません。
しかしその障害の重さを見て、他者が「健常者の基準で」勝手に「死にたくなる」気持ちは当然、とネットなどで言えてしまうことは怖いと思いました。当事者団体が危惧されているように、私が関わっているお子さんたちも含めて、障害の重い人の存在意義や存在価値を他者(健常者)が評価することにつながり得るという危惧があるからです。
 死にたいような状況でもこういうこともできる、こういうサポートもあると知らせることでその気持ちを変えられるのであれば、それをやっていくしかないし、様々なテクノロジーも出てきています。学校の先生になる人や、周囲でサポートする人がそれを知っておくことは、とても大事なことだと思います。


 

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