ままぱれ

ものづくりの楽しさを、未来の先生を通して子どもたちへ伝えたい

ものづくりの楽しさを、未来の先生を通して子どもたちへ伝えたい

前期はオンライン授業だった宮城教育大学も、徐々にキャンパスでの授業が再開されています。学生時代に電子黒板アプリを作った先生が4月から大学に戻り、さっそく現場で活躍中です。まだしばらくは続くであろうコロナの時代にリアルとバーチャルをどう使い分けるか、そしてプログラミング教育についてお聞きしてきました。

先生の研究・活動について教えてください。

 中学校の技術の先生になるための授業、特に木材加工を担当しています。これは私の研究のひとつですが、鉋(かんな)とノコギリにスマートフォンを付けます。コンピュータとものづくりのハイブリッドのような感じで、向きや動きを感知するスマホのセンサーを使って、ノコギリを使っている時に「もっと早く引いてください」というようなアドバイスを出すアプリです。

アプリで動きを感知し、アドバイスを出す。

子どもたちはそのアドバイスに従って練習できますし、先生のタブレットに生徒たちの練習データが届きますので、それを見て直接指導が必要な子どもが分かるなど、1対40の指導が効率化できます。鉋のほうは腰のポケットにもう1台スマホを入れ、手元だけでなく全身の動きをチェックします。仙台市内の中学校で使っていただき、これである程度は上達できそうだということがわかってきました。
 これを大学の前期のオンライン授業で行ったんです。学生が大学に来られないので、スマホと鉋やノコギリを取り付ける道具を郵送しました。自宅で筒状にした新聞紙をノコギリに、ティッシュ箱を木材にそれぞれ見立てて、そのアプリで練習してもらい、上手くなったところで動画を送ってもらいました。オンライン授業をやらなければならない状況になって、オンラインでできること、リアルでなければできないことの区別ができたような気がします。バーチャルでやったことによって、学生たちもリアルでものづくりをやりたくなったようです。

小さい時からものづくりが好きだったんですか?

 大好きでしたね。夏休みの自由研究に木で船を作ったり、高校では自分の部屋にロフトベッドを作りました。その時から中学校の技術の先生になりたいと思っていました。祖父がこういったことが得意で、庭先に祖父が作ったものがありましたから、その影響が大きいと思います。
 大学3年になって安藤明伸先生の研究室に入り、そこで初めてプログラミングをやってのめり込みました。プログラミングも画面の中でプログラムを組み、失敗したら修正することを繰り返すうちに人の役に立つものができる「デジタルものづくり」です。夢中になり、気が付いたら夜中だったということもありました(笑)。

授業風景

新型コロナウイルスが終息しても、オンラインでできることを授業外の時間で宿題としてやっておけば、対面での授業時間をより充実させることができるのではないでしょうか。


miyagiTouchは、先生が何年生の時に作ったアプリなのでしょうか?

 miyagiTouchは、学校の各教室にあるテレビを電子黒板として使うアプリで、2012年7月なので大学4年生の夏にリリースしました。私の名前が板垣なので、最初はiTouch(イタッチ)と言いました。当時の電子黒板は40~50万円や70万円と高価で、各校に1台しかありませんでした。でも、テレビなら各教室にあるし、タブレットがその頃なら3~4万円程度だったので、それを繋げれば電子黒板のようなことができると岩沼の小学校の先生がアイディアを下さいました。子どもたちが学習内容に集中できるよう華やかな画面でなく、不慣れな先生でも操作できるよう、できるだけシンプルを心がけて開発しました。日本産業技術教育学会のプログラミング部門で学会長賞、大学でも学長賞をいただき、その後宮城県の公式アプリになってmiyagiTouchになりました。現在、仙台市内の学校に導入されるタブレットにはプリインストールされていますね。
 自分が作ったものが人や社会の役に立つということは、技術科っぽいなと自分でも思いました。これからも私がやっていることが学校の先生がたや地域の役に立って行くといいと思っています。そういうことを学生たちと一緒にやって、ものづくりの楽しさが学生たちへ、将来学生たちが先生になった時に教える子どもたちにも伝わっていったらいいですね。

コロナ禍でオンライン授業になり苦労したこと、逆に良かったことはありますか?

 やればできるんだなと思いました。例年ですと、1年生の最初の授業で購入したパソコンを渡して、初期設定を一緒にやるんです。今回はそれができなかったので、マニュアルを作ってパソコンと一緒に学生の自宅へ郵送したら、ほぼ全員が滞りなくセットアップできました。これまで「無理だろう」とやらないでいたことで、損をしていたことがあったのかもしれません。学生たちはデジタルで生きている世代なので、得意なのかもしれません。先生がたの中にはオンライン授業やテレビ会議が未経験の方もおられ、学内で先生がたの講習会も行われました。
 宮教ではまだ、40人以上が受ける授業はオンラインになっています。もうしばらくこの状況は続いていくと思いますし、新型コロナウイルスが終息してもオンラインのほうがいいこともあると思います。話を一方的に聞くだけとか、資料を読めば進むようなものはオンラインでやって、ディスカッションや実習などは対面でやればいいと思います。オンラインでできることを授業外の時間で宿題としてやっておけば、対面の時間をより充実させることができるのではないでしょうか。私もほかの先生がたも半年間やってみて、オンラインでできることとできないことが区別できたと思います。

ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 例えば幼稚園で子どもたちが何か作ったり描いたりする時は、すごく楽しそうにしています。たぶんものづくりは、元々人間にとって楽しいことだと思うんです。私たちが子どもの頃は、木工などの「リアルものづくり」しかありませんでしたが、子どもたちがパソコンやスマホに自然に触れて生きているなかで、プログラミングで何かを作り出す「デジタルものづくり」も同じだと思います。お子さんがそういう活動を望んでいたら、ぜひ背中を押してあげてください。
 プログラミングの授業は、お父さんお母さんはやったことがないものですが、初心者でも学べるコンテンツはたくさんあります。YouTubeなどには学校の先生のように教えるのが上手な人もいます。そういうコンテンツを見つけてお子さんに教えてあげることもできますね。「プログラミングなんて難しくて無理!」と思う方もいらっしゃると思いますが、今回のオンライン授業のように、お父さんお母さんもやってみたら意外とできることもあるかもしれませんよ。また、在宅勤務の方とテレビ会議をしていると、お子さんが会議に交じってくることもあって「あっちに行ってなさい」と焦る姿もよく見ますが、みんなそれほど気にしていないので、あまり気にせず気楽に臨んでいただきたいです。

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