ままぱれ

一人で悩まず、誰かに打ち明けることが乗り越えるための第一歩

一人で悩まず、誰かに打ち明けることが乗り越えるための第一歩

人を導くお坊さんだからカウンセラーになったのかと思いきや、お寺は奥様のご実家だとか。
スクールカウンセラーや臨床心理士として活動してきた先生に、震災当時の話や、このコロナ禍を子どもも大人もどう乗り越えたらいいかについて、お話を伺ってきました。

樋口広思先生

緊張感はとても人を疲れさせます。自分が今疲れていないか、寝不足ではないかなどセルフチェックをして、自分の状態に気づくことが大切です。


樋口  広思 先生

都留文科大学卒業、上越教育大学大学院修了後、宮城県でスクールカウンセラーや臨床心理士の業務に従事。2019年4月から宮城教育大学で教育相談や臨床心理学を指導。石巻にある浄土宗源光寺住職。新潟県出身。小5と中2のお子さんのパパ。

先生の授業・研究について教えてください。

挿絵01 大学では「教育相談」と「臨床心理学」を担当しています。「教育相談」は教員免許取得に必要な科⽬なので、基本的には宮教の学⽣のほとんどが取る授業です。前職では、スクールカウンセラーとして勤務していたので、その経験を伝えてほしいとお声がけいただいて宮教に来ました。
 授業では、学校の現場で関わってきた⼦どもたちや保護者の⽅々の悩みや困難さを、私が経験した事例をもとに仮想事例を作成し、学⽣に提⽰しながら授業を⾏っています。理論的なことは本を読めば理解できますが、現場の雰囲気が鮮明にイメージできるように⼼がけています。宮教の学生は「自分にも何かできることはないか」を探している⼈が多く、とても積極的に授業に参加してくれます。
 私の研究は、スクールカウンセリングでも特に、事故や事件、災害が起きた時にどう対処したらいいかについての研究と、心の問題やストレスに関する知識や情報提供を行うことで予防的な力を身に付ける心の健康教育の研究をしています。また、震災の時に携わった被災地での相談活動の経験を生かし、⾃殺や、アルコールなどの依存症の予防教育を早期に学校で取り組めないかと研究を進めています。

臨床心理学を勉強しようと思ったきっかけは何ですか?

 小さい頃からずっと先生になるつもりで教員養成大学に進学し、そこで教育実習に行った時の経験がきっかけです。その際、勉強がわからず悩んでいたり人間関係に悩んでいたりする⼦どもたちと放課後に話し、宿題のサポートをしたんです。その子たちに接してみて、⾃分は何ができるのか、⾃分はこのまま先⽣になっていいのかと、とても悩みました。その時私が所属していた⼼理学のゼミの先⽣から、障害のある子どもたちの表現活動をサポートする団体のボランティアに誘われました。そこで、障害を抱える⼦どもたちが⽣き⽣きと表現活動をするのを間近に⾒て、こういう⽀援がしたいと考え、⼤学院の臨床⼼理学コースに進学しました。その後、宮城県に来てスクールカウンセラーや、子どもの精神科の心理士、乳幼児の健診で気になる子どもの発達相談などに関わってきました。

宮城県ではいじめや不登校が深刻な問題ですが、どのような対応が取られているのでしょうか。

 いじめ防⽌対策推進法が制定され、宮城県も仙台市もそれに基づき、いじめ防⽌基本⽅針を策定しています。方針にはいじめが起きないような環境づくりや、いじめが起きてしまった時の早期対応とサポートが組み込まれており、スクールカウンセラーはそのほとんどに関わっています。彼らは、いじめの未然防⽌の部分では、日頃からの人間関係の調整役も担っています。先生や保護者よりも早く、いじめの訴えを本人から聞くこともあります。また不登校ということであれば、その子の学習環境をどう整えるかなどを先生たちと考えていくのもスクールカウンセラーの役割です。
 SOSが出せる子どもはいいのですが、出せない子どももいますし、見えないところで行われるのがいじめの特性なので、なかなか拾いきれない部分もあります。それでも、人の気持ちや傷つきに感度が高い人たちがスクールカウンセラーになっていると思っています。子どもたちと立ち話や挨拶をした時に、「あれ、おかしいな?様子が変だな」と気づき、相談や支援に繋がっていくことも経験上あります。

東日本大震災の後、心のケアの活動をされているそうですね。

挿絵02 スクールカウンセラーの繋がりをきっかけに、「⼀般社団法⼈ 震災こころのケア・ネットワークみやぎ からころステーション」に携わっています。被害の⼤きかった⽯巻・東松島・⼥川を中⼼に、相談にくるのを待っているというより、仮設住宅や在宅避難の⽅々を訪問したり、自治体の健康調査のお手伝い、集会所での健康教室や⼦育て⽀援の座談会などを⾏ったり、出かけていく⽀援(アウトリーチ)を⾏ってきました。
 女性は集会所でのお茶飲みに来てくれますが、40~50代の男性はなかなか来てくれませんでした。そこで男性のサロンを作ってゲームをしたり、みんなでレクリエーションをやったりもしています。参加される⽅々の中には、津波でご家族を亡くされた⽅や、震災後に離婚して一人になった方もいます。責任感も強いので、その孤独とストレスで酒量が増えるんです。朝ドラの「おかえりモネ」で浅野忠信さんがそういった役でしたが、あの人どうしているかな、こういうこともあったなと思い出しながら見ています。復興住宅への訪問や被災地での相談は今も続けていますが、被災した当時⼦どもだった⼈たちの進路相談を受けることもあり、時の流れを感じています。

ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 まずコロナについてですが、震災ととても重なって⾒えます。⾒通しが⽴たず、どうなるかわからない不安の中にいると、責めてもしょうがないとわかっていながらも、人を責めたくなったり悩んだりしてしまいますね。みんなで助け合って震災を乗り越えてきたこの10年の経験はとても大きいことなので、コロナもそういう気持ちで乗り越えていければと思っています。緊張感はとても人を疲れさせます。自分が今疲れていないか、寝不足ではないかなどセルフチェックをして、自分の状態に気づくことが大切です。ストレス発散のためのカラオケや飲酒もまだ慎重になる時期でしょうから、家族と美味しくご飯を食べることや、しっかり眠って体を動かすこと。そういう基本に立ち返って、セルフケアすることが大切です。
 いじめもコロナもそうですが、みんな困っているんだからとか、自分だけじゃないと思うとSOSを出しづらいと感じるかと思います。でもご自身やお子さんの様子に違和感を感じたら、ぜひ聞いてくれそうな人を見つけて話をしてほしいと思います。震災後は相談機関も増え、様々な窓口が広がっています。必ず自分と相性の合う聴き⼿がいますので、ぜひ相談してください。我慢するのは日本人らしさというか、周囲の状況をよく見ることができているいい点でもあるのですが、自分をないがしろにしてしまうこともあるので、そのバランスが取れればいいなと思います。

掲載年月/2021.11

  

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