ままぱれ

先生の卵のために現場の声を学びの場に

子どもたちを教え育てる先生の卵のために現場の声を学びの場に

エーリヒ・ケストナーの絵本『動物会議』が掲げたスローガンも、「子どもたちのために!」でした。
宮城教育大学の教職大学院は、子どもたちのためにもっと良い教育を探究する先生と先生の卵たちが集まる実践的な学びの場。
30年の現場での経験を基に、これからの子どもたちに求められることを伺ってきました。

大変なこともありますが、子どもとの出会いはその苦労の何倍にもなって返ってきます。
親も地域も先生も「チーム子ども」として一丸となり、子どもたちを見守っていっていただきたいというのが私の願いです。

先生の授業・研究について教えてください。

宮城教育大学には、実務家教員が常時3名おり、私もその一人です。
約30年間小学校教員をしてきましたので、その経験を踏まえて新しい時代に求められる子どもたちの資質・能力を育てるための「授業づくり」の研究や授業をしています。
  教職大学院の授業は、チームで行うことが多く、例えば私が担当する授業では、ある先生は、輝かしい実践を残された教育者の紹介を、ある先生は、教育理論や教育法規を、そして私が現場での具体的な実践事例などお話ししています。
  宮城教育大学の大学院生は、常に「子どもたち」 のことを考えて研究に取り組んでいます。日々の授業もいつも真剣そのものです。 現場を経験された現職教員院生と、教員を目指している院生が、授業やゼミなどでお互いに学び合えるのも宮城教育大学教職大学院のよさです。

授業ではどんな話をされているのですか?

 現代は子どもたちも大人も、社会や世界が急に変わって、予想しがたい状況に陥ることが多いですよね。その時に臨機応変に対応できる「汎用的な力」、つまりアドリブや応用力を身に付けさせる授業づくりが求められています。「何を理解して、何ができるか」「理解していること、できることをどう使っていくか」「どのように人や社会と関わり、自分に合った人生を送っていくか」の3つの柱を、子どもたちがバランスよく身に付けるためにはどんな授業がいいのか、現場の話を交えながらお話ししています。
 掛け算や漢字など、子どもたちが何を学ぶかも大切ですが、自分に合った学び方を身に付けさせることが大事だと思います。学校にいる間は先生が教え、友だちと学び合う機会も多いですが、社会に出たら自分で学んでいくことになります。社会での学びに挫折して会社を辞めたりなどしないよう、自分に合った学び方の習得を重視するようになった点が、昔と今の教育現場の一番の変化ではないかと思います。
 学校で調べ学習の課題を出すと、ほとんどがウィキペディアで調べてくるので見事に同じことを書いてくるんです。ネットの百科事典だけではなく、おうちの人に聞いたり、図書館の本で調べたり、引き出しをたくさん作ってほしいですね。ほかの調べ方でネット百科事典と違う記述が見つかれば「あれ?どっちが正しいんだ?」と、よく確認することを学ぶとても大事なきっかけになると思います。
単に学びのHow toを教えるのではなく、自分に合った学び方の使い分けが大切ですね。

ずっと小学校で教えてこられて、印象に残っていることはありますか?

毎年たくさんの子どもたちと出会い、たくさんの感動をもらっています。 子どもたちが一気にぽーんと成長する、いわゆる「 化ける」瞬間を、 間近で感じられることが喜びです。 日々の授業ももちろんですが、特に、一番そのことを強く感じるのは、秋の学芸会です。 私は、脚本を書いて劇をすることが多かったのですが、その際には、一人ひとセリフを用意していました。ふだんの授業では、声が小さくて自信のなかった子が、友達の練習を見て刺激され、ギアが入り、発声や演技が見違えるようになるときがあります。その頑張りは、近くの子に影響し、やがて学級・学年へと広がっていきます。
一度、この域に達すると教師は、指導や支援の必要がなくなり、子どもたち自身で、どこまでも成長していきます。このような感動というエネルギーを子どもたちからもらってずっと生活しています。


先生を目指している学生たちに求められていることは?

 私は、素晴らしい先生とたくさん出会ってきたので先生になろうと決めました。特に、学校では明るく振舞っていた私の悩みに気づき、声をかけてくれた年配の先生はすごいなと思いました。教科の専門的な知識や指導力は経験すればいくらでも身に付きますが、子どもの気持ちを理解する力や、保護者や地域の方々などとやり取りするコミュニケーション力は簡単に身に付くものではありません。先生にも「汎用的な力」が求められる時代です。若い人たちにはぜひ多くの人と交わっていただき、自分の専門外のことにも寄り道したり、手を出してほしいと思います。そうすることで人と関わる力や、引き出しが増えていきますので。
 大変なこともありますが、子どもとの出会いはその苦労の何倍にもなって返ってきます。ぜひ頑張って私たちの仲間になってもらい、親も地域も先生も「チーム子ども」として一丸となり、子どもたちを見守っていっていただきたいというのが私の願いです。

ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 保護者の方々も学校も、子どもたちの成長を願う気持ちは同じです。時に意見が異なることもあるかもしれませんが、ご家庭と学校がそれぞれお互いを理解することが大事なので、ぜひ保護者の方々には学校行事にたくさん参加してほしいと思っています。お仕事などでなかなか参加できないという方には、学校からのお便りを見ていただいたり、夜などにお子さんとお話しする際、学校の様子を聞いていただければと思います。授業参観や運動会だけでなく、総合学習や生活科の授業でご協力をお願いしたいこともありますので、ぜひお子さんたちの成長を一緒に見守ってください。
 もうすぐコロナ禍になって3度目の夏休みです。これまでできなかったことも少しずつできるようになってきていますが、通常の「夏休みの過ごし方」を忘れている子がたくさんいるのではないかと心配しています。交通事故と水の事故にはくれぐれも気をつけてくださいね。熱中症の心配もあります。友だちと外で遊ぶ内容によっては、マスクの着脱や水分補給が大切になります。これはリアルに「生きる力」や「考えること」になります。はじめから自分たちだけで判断はできないと思うので、最初は天気予報や遊びの内容をお子さんと親御さんで一緒に確認して、判断する力を養っていただければと思います。

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