毎日の食事と幅広い食体験が育む、健康と未来の自分を守る力
「私くらいになると骨粗しょう症が心配だから、毎日牛乳を飲んでカルシウムを摂ってます」と亀井先生。
子どもたちはもちろん、ママや家族も年齢に応じて必要になる栄養は変わっていきます。
お子さんが独立した時にもきちんと暮らしていける土台づくりの大切さをうかがってきました。
先生の研究について教えてください。
大学では家庭科専門科目の食物分野と小児栄養学を担当しています。小学校の先生を目指す学生には、家庭科の衣食住の「食」で「なぜ食べなければいけないか」といった栄養素の話をし、家庭科専攻の学生にはもっと踏み込んだ成人栄養と、生まれた時から1歳半~2歳前くらいまでの小児栄養を教えています。
私は以前、食物繊維の研究をしていましたが、宮城教育大学にきてからはレジスタントスターチ(難消化性デンプン)が研究対象です。食物繊維と同じように消化されずに大腸まで届くでんぷんで、穀類やいも類、豆類などの食品に含まれています。その量が調理方法や調味料によってどう変化するかを学生と一緒に実験しています。また、学生の食生活や食に関する考え方なども調べています。
学生さんたちの食生活はいかがですか?
あまり食事や健康のことは考えていないのかな、という印象です。栄養については家庭科で小学校5年生から習っており、知識は持っているはずなのですが、たとえば飢餓など、栄養が足りなければ最悪亡くなる人がいるということを身近には感じられないので、自分事として捉えていないと感じています。
大学の学食なら小鉢などもあり、栄養のバランスが考えられたメニューになっていますが、コロナ禍になってから学食が昼のみの営業になってしまいました。一人暮らしや寮の学生は、食にかけるお金の優先順位が低いです。ジャンクな食べ物はたくさんあるし安いのですが、それでは体に必要な栄養素は摂れません。大学生になったら自分の暮らしやお金を自分で管理するわけですから、それまで食に対してどう向き合ってきたかが問われるのだと思います。
家庭での食への関わりが大事ですね。
食の授業は家庭科に限りません。理科にも出てきますし、社会問題となっていますから社会の授業にも出てきます。先生方がそれにどう触れるかです。
また家庭でも、買い物に一緒に行ったり、プランターで野菜を作ったり、調理を手伝ってもらったりと、食べ物に触れる機会をできるだけ持つことで、食に対する意識が自然と身に付きますし、そういう経験をしてきた学生は自分の食生活の管理ができている傾向にあります。料理をする時間がなくてできあいのお惣菜を選ぶ時でも、小さい頃に「これも食べるんだよ」とか「お野菜も一緒に食べようね」と言われて育った子は、何を食べなければならないかが刷り込まれています。食に限らず、小さい時に身に付いた習慣を変えるのは非常に難しいです。勉強ができても体を壊したら元も子もないので、子どもの頃からしっかりした土台を作ってあげてください。
先生は子どもの頃、好き嫌いはありましたか?
今は平気ですが、酸っぱいものが苦手で梅干しがダメでした。味覚が確定する前の小さい時に、様々な食体験をさせることも大事です。子どもの時に決まったものしか食べていないと、大人になってからその許容範囲を広げるのは大変です。成長すると保守的になるので、自分の知らないものを食べるのはハードルが高いですね。小さい時にも「知らないものは嫌だ」という防衛本能はありますが、親御さんが食べていたら安心ですし、おいしそうに食べていたら、子どもは好奇心が強いので自分も食べたくなります。ですから親御さんも、好き嫌いしてはダメなんです(笑)。
お正月のおせちや雑煮、ひな祭りのちらし寿司などの歳時食を一緒に作ったり食べたり、また地域の行事食には普段食べないような食材も入っているので、そういう行事など にも参加して色々な食事を経験させてあげてほしいですね。
ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。
嫌いなものを無理やり食べさせても、嫌な印象だけが残って余計嫌いになります。同じ栄養素を含んだ違うものを与えたり、味や調理法など手を変え品を変えトライしてみてください。小さい時は大きさや食感が食べづらくて嫌いということもあります。ずっと食べていなかったけれど、いざ食べてみたらおいしかったのでそれから食べるようになることもありますので、長い目で見てはいかがでしょうか。
保護者の皆さんにも、ご自分の食事や生活、健康を意識してほしいと思います。そうすればお子さんたちにも自然と伝わりますし、一緒に食事しながら、その食べ物がどう体にいいかなど、食と健康に関わるお話などしていけば、お子さんの食はより豊かなものになっていくと思います。