ままぱれ

日々の暮らしや四季折々の変化から、素敵な音を見つけよう。

日々の暮らしや 四季折々の変化から、 素敵な音を見つけよう。

「絶対音感」は音を聞いてその音名がわかる能力です。
日常の音や人の喋る声がドレミで聞こえる人もいるそうですが、今回インタビューした木下先生には、周りの環境や自然が「音楽」として聞こえているのかもしれません。
スマホのアプリなどで誰でも簡単に表現ができる時代、音楽を「創作」する授業づくりの取り組みについてお話を伺いました。

先生の授業・研究について教えてください。

専門は音楽教育学で、学部生の授業では音楽理論と音楽科教育法を教えています。音楽理論では和音やメロディーの構造などを教え、音楽科教育法は子どもたちの活動支援の方法や指導の振り返りについて、ほかの先生方と一緒に教えています。
 個人の研究としては、大学院からずっと小・中・高の創作分野の教材開発をしています。以前の音楽の授業の「創作」では、わらべ歌やクラシック音楽の仕組みで曲を作る教材がとても多く、子どもたちが普段聞いている音楽とは隔たりがありました。そこで、当時流行っていたファンキーモンキーベイビーズやGReeeeNなどの身近なJポップを分析して教材を作り、中学校で実践してもらったところ、子どもたちが日常で培ってきた知識が創作された音楽に活用されていることがアンケートからわかりました。最近はブルースやジャズ、Jポップでもボーカロイドの曲など、もっと最新の音楽の構造を使い、「この音階を使ってメロディーを作ってみよう」と学校現場で子どもたちとの即興演奏を多く行っています。


音楽は得意・不得意が分かれますが、そういう授業なら楽しいですね。

 今の音楽科教育が向かおうとしているのは、一人ひとりがどのように音や音楽と関わり、そこから何かを感じ取ったり発想したりするかということです。要はクリエイティブに音楽に関わることが求められるようになってきていると感じます。みんなで合わせる合唱や合奏は、それはそれとして価値がありますが、AI(人工知能)の進歩やインクルーシブ教育の推進を考えた時に、それぞれが感じたことや表したいことを試しながら表現する創作の授業が、ますます重要になっています。
 以前、保育者を対象にした教本で、「散歩してみよう」という教材を作りました。風の音や水たまりを踏んだ時の音を聴いたり、そこから様々なことを感じたり、静寂の中にも音の存在があるのではないかと探究したりします。表現というのは環境から触発されて生まれるものなので、楽器も先生が使い方を教える前に、まず子ども自身が楽器と出会って、鳴らし方や音を探究してほしいと思います。楽器に限らずモノから出せる音を探究する中で、「この音が素敵だな」というものが見つかれば、そこから新たな表現が生まれてくるのではないでしょうか。そうした意味で、子どもは文化を創造する存在だとも思います。


音楽を好きになったきっかけを教えてください。

 両親がヤマハに勤めており、父がポピュラー音楽のプロデューサーでした。多種多様な音楽や楽器がたくさんある家庭でした。記憶はないのですが、1歳頃にトイピアノがお気に入りだったそうで、それがきっかけで音楽教室に通うことになりました。そこで出会った先生が、即興演奏や現代音楽に詳しい先生だったので、バイエルではなくバルトークというハンガリーの作曲家の曲からピアノを始めました。バイエルは響きが単調に感じられますが、バルトークは譜面が難しい代わりに、想像もできないようなフレーズの連続でした。様々な探究ができて面白かったことが、自分の将来へとても大きな影響を与えたと思います。
 幼少期からジャンルにこだわらず、洋楽やヴィジュアル系バンドの曲など様々な音楽を聴いていたようです。そんな私を両親は認めて、一緒に聴いたり、ライブに連れて行ってくれたりしました。やり方や好みを否定されなかったこと、これが音楽を好きになったきっかけかもしれません。学生の頃は学内で現代音楽のコンサートや、学外でもジャズやロックのライブをしていましたが、今は学生たちと授業で即興演奏をすることで満たされています。


先生は先日のG7サミット会場になった広島県のご出身ですね。

 僕が子どもの頃は、広島市内の小学校は8月6日が登校日でした。平和学習がありましたし、身内の被爆者にインタビューする宿題もありました。原爆ドームは街の中心にあって、日頃の生活ではそれほど意識しないのですが、広島を離れてみて改めていろいろと感じることは多いですね。先日山元町にある震災遺構・中浜小学校に行ってきましたが、本当に実際に見てみないとわからないもの。ですし、感じること、考えることが非常にたくさんありました。
 ちなみに、G7サミットではイギリスのスナク首相がお好み焼きを焼いたり、赤いカープの靴下を履いていましたが、あれは全広島県民を味方につけたと思います(笑)。


ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

まずは子ども一人ひとりを信じてほしいということですね。子どもたちは小さい頃から様々な経験をしています。ただその知識や経験の活かし方を知らないだけで、その支援の場を提供すればいろいろなことができます。だから、子どもたちを可能性に満ちた存在として見てほしいですし、実際、成長すればするほど可能性は広がるはずです。子どもたちが持つ可能性を、常に見つめ続けてほしいです。
 また、「これはこうだね」と親が教えたり与えたりするよりも、「これはこうかもしれないね、ああかもしれないね」と、お子さんと一緒に感じたり試したりすることが大事です。お子さんがしていることや好きなことを否定せず、一緒にその経験を味わってくれることで安心感が生まれ、「もっとやってみたい」という気持ちに繋がっていくのではないかと思います。日々の生活の中でお子さんが出会う音や音楽を、一緒に聴き、感じ、味わってみてはいかがでしょうか。

  

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