ままぱれ

一人ひとりの困難に寄り添い 生き方や学びを支えるために

一人ひとりの困難に寄り添い生き方や学びを支えるために

ままぱれのアンケートでも、「発達障害」について取り上げてほしいという声が毎回寄せられます。


「誰に相談していいかわからない」
「我が子に障害があることが受け入れられない」


―皆さまのお声をもとに、数多くのお子さんや保護者の方々、先生方と接してきた先生にお話を伺ってきました。


先生の授業や活動について教えてください。

挿絵01

 大学の授業では主に特別支援学校の教員免許を取るために学んでいる学生に教えています。昨今は、通常学級にも発達障害の可能性がある子どもたちがたくさんいると思われるため、副免許で特別支援の免許を取る学生も増えていますね。教員となった先輩方から、通常学級を担当していても「特別支援や発達障害について勉強しておかないと続けていけない」と学級づくりに困難を感じていると聞き、ある種の危機感に駆られて勉強している学生も多いようです。
 授業以外では私は現場に出かけていくことが多く、主に仙台市の小中学校の巡回相談を行っています。学校の依頼に応じて教室を参観し、支援が必要と思われる子どもたちの状況を、先生方と一緒にどう見立てて支援していくか考えていきます。また、大学では定期的に教育相談という形で、障害のあるお子さんご本人や保護者の方と抱えている課題について考えています。小児科に赴き、発達相談のカウンセリングも月1回程度行っています。


発達障害を取り巻く環境の変化についてはどう感じていますか。

 発達障害の主な代表例は、「読み・書き・計算」に困難が現れる学習障害(LD)、多動性・衝動性・不注意などを特徴としたADHD、人とのコミュニケーションに困難を抱える自閉症スペクトラム障害(ASD)です。文部科学省が平成14年から10年ごとに、小中学校の学級担任を対象として、発達障害の可能性のある児童生徒がどのくらいいるかの調査をしています。最初の調査では6.3%程度、平成24年の調査では6.5%程度、最新の令和4年は8.8%になりました。これは発達障害の可能性のある子どもの割合が増えているわけではなく、先生方の意識が高まって、発達障害への理解が広がっているということだと思われます。8.8%というと1クラスに3~4人程度ですが、実際には支援が必要な子どもはもう少し多いかもしれません。メディアでの扱いや、保護者や周りの方々の理解や知識もだいぶ進んできています。
 一番心配なのは「二次障害」です。何度取り組んでもできないことを叱られたり、自分でも自信を失くしてしまったり、自己肯定感が下がって無気力になったり、自棄になって暴力をふるったりなどの二次的な問題が出てくる可能性のことです。これは上記の3つの障害のどれであっても発生する可能性があり、それが原因で集団の中に居づらくなってしまうと、発達障害に対する支援だけでは追いつかなくなってしまいます。


自分の子どもが発達障害かもしれないと思った時、相談できる施設はありますか。

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 仙台市であれば、発達相談支援センター「アーチル」という施設が2ヶ所あります。乳幼児期から成人期まで対応してくれるので、個人的にはここが一番いいと思っています。ただ、電話予約から相談に繋がるまで最短でも1~2ヶ月かかるところが悩みどころですね。発達相談支援センターはハードルが高いと感じる場合は、「のびすく」や近くの児童館でも乳幼児期の相談を受けているはずなので、そちらの方が気軽に相談しやすいかもしれませんね。
 また、小中学校では「特別支援教育コーディネーター」に指名されている特別支援の相談窓口を担当している先生がいます。その先生に相談すれば学内での調整はもちろん、場合によっては学外の機関に繋げてくれることもあります。あまり身近ではないかもしれませんが、特別支援学校も「地域支援部」のような名称で、地域からの相談も受け付けています。


ままぱれの読者からも「グレーゾーンの我が子にどう寄り添ったらいいのか。親としては通常学級で学ばせたいが大丈夫でしょうか」という質問が届いています。

 発達障害のお子さんたちは知的なハンディキャップはないので、勉強面では通常学級で学んでいけるはずです。ですが、勉強さえできればいいというわけではありません。やはり対人関係面の困難さ、生きにくさ、学びにくさがあると先ほど指摘したような「二次障害」が生じる可能性がでてきます。日本の教育システムには、「通常学級」「特別支援学級」「通級による指導」というものがあります。「通級による指導」というのは、通常学級に籍を置きつつ、週に1~2時間はその子の特性に合わせた指導が受けられる制度です。その指導では一人ひとりの障害の内容に合わせてカスタマイズした学習を行ったり、感情調整の方法を学んだりと、いわゆる「生きていくための力を高める学び」ができます。どうすべきか悩んでいる方は、この教育システムの積極的な活用がおすすめです。
 発達障害には集団生活での刺激が難点なので、場合によっては特別支援学級も視野に入れましょう。卒業するまでずっと特別支援学級にいるわけではなく、慣れてきたら通常学級にいる時間を増やしていく、というような柔軟さも今の教育には必要ですね。

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ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 お子さんが小さいうちは、なかなか大人になった姿を想像しにくいかと思いますが、お子さんを長い目で見ていくことが大事です。将来社会に出た時、どんな活躍ができるかはきっと学力の問題だけではありません。他人と比較するのではなく、我が子の好きなこと、得意なことを大事にしながら育てていくことがとても重要だと私は考えています。できないことばかりに直面させて、「なんであなたはできないの?」と言うのではなく、我が子の中にある素敵な面を見つけ、それを育ててあげることが、生きる力になっていくと思います。また、お子さんが好きなものを通して、家族以外にも世代を超えて話ができる仲間や場所を見つけてあげられるといいですね。人間関係は共感がベースにあります。仲間や場所を見つけてあげることで自己肯定感が上がり、お子さんをいい方向へと導いてくれるのではないでしょうか。自分の人生の主人公は自分だと思う感覚を持てる機会を、小さいうちからたくさん与えてあげられるといいですね。


先生の本

「共感」からはじめる発達障害のある子どもの支援教室における行動−情緒の問題を解決する6つのステップ
植木田先生の著書。2023年8月刊行。教育相談やカウンセリングで出会った子どもたちから知見を得た仮想事例。先生方だけでなくご家族にも読みやすい解説書。


今回の先生

植木田 潤 先生

東京都出身。平成25年3月まで独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所教育支援部研究員。平成25年4月から宮城教育大学で教鞭を執り、現在は宮城教育大学大学院教育学研究科教授。臨床心理士、公認心理師、特別支援教育士スーパーバイザー。専門は発達障害学。
自分の人生の主人公は自分だと思う感覚を持てる機会を、 小さいうちからたくさん与えてあげられるといいですね。

掲載年月/2023.11

  

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