知って安心!子宮がん徹底予防術
1958年に創設され、宮城だけでなく日本のがん検診をもリードしている宮城県対がん協会。
ままぱれ特派員が子宮がんの予防と検診のお話を伺い、2024年4月にオープンしたばかりの新しい検診センターを見学させていただきました。
お話を伺ったのは
宮城県対がん協会 細胞診センター所長
東北大学大学院医学系研究科 客員教授
東北大学 名誉教授
伊藤 潔(きよし)先生
東北大学医学部産婦人科在籍時より子宮がんと性ホルモンに関する研究に邁進し、東日本大震災後は東北大学災害科学国際研究所の運営に携わりながら、災害産婦人科学分野の教授として研究の幅を広げる。宮城県のみならず日本全般での子宮がん検診に関わる実践的な研究を行っている。
参加した特派員
熊谷明日香さん、小泉理惠さん、佐藤寛子さん、藤原和江さん、舛田麻美さん
「子宮頸がん」は原因がわかっている「がん」
子宮がん検診には、子宮頸がん検診(子宮の入口)と子宮体がん検診(子宮の奥)があります。子宮頸がんは、20~30歳代の若い世代の罹患が最も多く、日本では毎年約1万人以上の女性がかかり、約2,900人が亡くなっています。がんが進行して本格的な浸潤(しんじゅん)がんになれば子宮を全摘することになりますが、ごく初期の上皮内(じょうひない)がんの段階であれば、子宮の入口の部分だけを切除する小さな手術で済みます。
また、子宮頸がんは罹患する原因も、がんに進行する経緯もわかっています。ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが原因で、人に感染する200種類くらいのHPVのうち、婦人科に関しては約40種類が性交渉で感染すると言われています。さらにそのうちの13種類くらいに発がん性があるとされ、子宮頸がんはこの13種類のハイリスク型のHPVが原因です。HPV自体は非常にありふれたインフルエンザのようなウイルスで、ほとんどの女性が一生に一度は感染すると言われ、感染してもほとんどの場合は一過性で自然消滅します。最終的に本格的ながんになる人は約0.1%と言われています。
子宮頸がんを根絶するための3つのこと
❶ ワクチンの接種
❷ がん検診の受診
❸ きちんとした治療とケア
WHO(世界保健機関)では、ワクチンの接種、がん検診の受診、きちんとした治療とケアの3つすべての対策が成功すると、2050年までに子宮頸がんの発生を40%以上減らすことができるとしています。子宮頸がんの発症率の推移ですが、ほかの先進国の発症率はどんどん下がっているのに、唯一日本だけが増えています。子宮頸がんは25~44歳の若年層に非常に多く、ちょうど妊娠可能な世代であるため、別名「マザーキラー」とも呼ばれています。その中でも20代30代はこの10年で4倍と急激に増えているので、やはり若年での早期発見と治療は、個人としてはもちろん、少子化対策を打ち出している国としても重要な局面にきています。
HPVワクチン接種でがんの原因の感染を約90%予防
子宮頸がんのきっかけ(HPV感染)を予防するためのワクチンがあります。15歳〜45歳くらいまでの接種が推奨されており、10~16歳で88%、17~30歳で53%程度の減少効果があると言われています。日本では2013年4月から、小学校6年生~高校1年生の女性を対象に無料の定期接種が始まったのですが、副作用などがセンセーショナルに報道され、厚生労働省は開始後たった2ヶ月で受診券を郵送するなどの積極的勧奨を控えることになりました。その後、国内外の状況や知見を踏まえ、2022年4月から接種対象の女性への案内を再開し、積極的勧奨を控えていた時期にワクチン接種の機会を逃した方々(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)にも公費での接種が行われています。
2023年4月から、子宮頸がんの原因を約90%防げる、非常に効果の高い9価ワクチンが使えるようになりました。ところが、2011年度に日本で67%、宮城で77~78%だったワクチン接種率が、現在はたったの8%です。いろいろPRはしていますが、まだまだ接種率は戻っていません。定期接種を受けるのは中学生や高校生なので、親御さんと相談して接種するかどうか決める方が多いと思います。親御さんは、90%程度の効果があり国としても積極的勧奨を再開していることをご理解いただき、お子さんの相談に乗っていただきたいですね。
ちなみに男性でも、HPVによって咽頭がんや肛門がんになると言われています。海外では男性に対しても定期接種を行っている国があります。日本でも自費で接種することはもちろんできます。
さらに検診による早期発見でがんを予防!
次に検診についてですが、HPVに感染しても、異形成というがんになる前の状態で発見し治療すれば、がんにはなりません。子宮頸がんの異形成も上皮内がんも、ごく初期のものは無症状なので、検査しなければ見つかりません。子宮頸がん検診は、子宮の入口の細胞を採り、顕微鏡で細胞の変化を見つける「細胞診」です。ニュージーランドやイギリスの受診率70~80%に対し、日本では40%程度です。早期発見のためにも、20歳になったら定期的に受けていただければと思います。
また新しい検査方法も出てきており、今は正常な状態の細胞でも、将来的に変異する可能性のあるハイリスク型のHPVに感染しているのかどうか、将来のリスクを知る検査があります。仙台市などでは「細胞診」と、この「HPV検査(オプション・自費)」の併用法が行われています。
気になることがあったら、放っておかないで婦人科へ
最後は子宮体がんです。これは高齢の方に多く、この10年間で2倍になっています。閉経の少し前くらいから40~60代に多いので、ままぱれ読者のお母さん世代で不正出血などがあったら、気をつけていただきたいです。子宮体がんは糖尿病や肥満、高血圧などの、いわゆるメタボリックシンドロームの人がなりやすい傾向にあります。また閉経後に多い卵巣がんの発症率も増えているので、こちらも気をつけていただきたいですね。卵巣がんの一部では最近、遺伝性乳がん卵巣がん症候群という、遺伝的な素因で乳がん、卵巣がんともに発症しやすい傾向があることがわかってきました。身内に罹患された方がいらっしゃる場合は、気に留めていただければと思います。
最後に、がんを防ぐためにするべきことをご紹介します。子宮頸がんはワクチン接種です。さらに定期的ながん検診を受ければ、早い段階で発見できます。また、子宮体がんの初期症状は、閉経した頃の出血なので、症状が出た場合は放っておかず、婦人科に相談してくださいね。子宮がん検診も内診ではなく超音波検査をするところが増えています。
より詳しい定期的な検査でリスクを減らしていきましょう。
新がん検診センターはこんなところ!
- 1階はがん・生活習慣病健診フロア、2階は消化器内視鏡検診センター、3階は女性専用フロアで乳がん・子宮がん検診に対応。ここで健康診断から婦人科検診までトータルで受けられます。
- キッズスペースがあるから、お子様連れでの検診もOK!
- AI診断装置を導入し、検査の精度を向上。次世代型のがん検診センターです。
- 消化器内視鏡検診センターは国内でも有数の規模。予約も取りやすくなります。
- 病気の発見から治療する専門医療機関への紹介まで、一貫してできることが特徴。
- お話を伺った伊藤先生が細胞診センター所長。国内でもトップクラスに精度の高い検診体制です。
SDGsと日本対がん協会
がん征圧活動は「医療・健康問題」だけでなく「社会問題」「経済問題」の解決を目指す活動でもあります。
「みやぎのがんなんでも相談」 (無料)
専門の相談員ががんに関する様々な相談に応じます。本人でなくご家族やお友だちでもOK。不安な時は誰かに相談し、自分の頭や心を整理することが大事です。
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公益財団法人 宮城県対がん協会
住所|仙台市青葉区上杉5-7-30
TEL|022-263-1525(平日8:30〜17:00まで受付)
FAX|022-262-3775
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掲載年月/2024.05