ままぱれ

運動はずっと健康でいるための投資!親子で一緒に体を動かそう。

運動はずっと健康でいるための投資!親子で一緒に体を動かそう。

大人のメタボもですが、毎年宮城県の子どもたちの肥満傾向が話題になります。
ところがそれに加えて体力の低下も心配なのだとか。
毎日の暮らしの中で設備が便利になったり、PCやスマホが身近になったことで、果たして私たちは進化しているのか、それとも退化しているのか…。

  

握ることや的を狙って投げるというのは人間特有の機能とも言えるので、それが衰退していることは、人という個体として何か重大なことが起こっているのではないかと思っています。

黒川修行先生

黒川 修行先生
栃木県出身。宮城教育大学小学校教員養成課程卒業ののち、宇都宮大学大学院教育学研究科で教育学修士、東北大学大学院医学系研究科で博士(医学)。専門は学校保健、衛生学で、子どもの発育・発達について研究している。高校2年生男子のパパ。

  

大学ではどんな授業をされているのですか?

挿絵01

 研究は、成長期から青年期くらいまでの健康に関する領域を扱っています。これまで子どもの肥満や睡眠に関する調査や宮城県からの依頼で子どもの体力テストの解析を行っていましたが、最近気になることが見え隠れしてきたので、大学生の健康についても調査、研究を行っています。授業では健康に関する授業、体育実習・実技を担当しています。実技といっても体を動かしながら健康について考えるもので、宮城教育大学には「山野歩走」というちょっと変わった種目があります。大学の周りの山を1時間ちょっと歩きながら、山歩きの基本や森の植生の話題などを話しています。私は高校時代に山岳部に所属していたので、楽しくなってついつい速く歩いてしまって。同行する学生たちの息が上がらないように、意識しながら活動しています(笑)。
 研究室には私の研究領域に興味を持った学生が集まるのですが、昨年度の卒業生3人は、匂いが集中力や作業効率に及ぼす影響であったり、部屋の明るさが運動時の生理的な反応に及ぼす影響という感覚に関連する研究、もう一人は生活習慣と「やり抜く力(GRIT)」の関係を調査・分析していました。

  

宮城県の子どもたちの肥満や運動不足は、毎年話題になりますね。

 文部科学省の学校保健統計調査における肥満傾向児の出現率は、このところ減少傾向にあったのですが、コロナ禍もあり、またちょっと上昇傾向にあります。さらに、気になるのは体力のほうで、握力とボール投げの記録は、減少傾向が続いています。現代の暮らしでは、水道の蛇口もドアノブも握って回すものが減っていますし、自動ドアのようにこちらが力をかけなくても機械が反応してくれるものになっています。ボール投げにしても、最近は投げる機会が減っていますし、公園でボール遊び禁止のところも増えていると思います。握ることや的を狙って投げるというのは人間特有の機能とも言えるので、それが衰退していることは、人という個体として何か重大なことが起こっているのではないかと思っています。
 これらの結果を受け、宮城県では令和5年度から体力・運動能力向上センターを設置し、OB/OGの先生方が体力向上コーディネーターとして各学校に指導に入っています。今後は体力の改善が期待できるのではないかと思います。体力は将来の死亡率などにも関わっているとわかっていますので、子どものうちから体力を向上させることは、将来の健康を考える上でも重要なことと言えます。

  

子どもたちを取り巻く環境の変化で気になることはありますか?

挿絵02

 最近話題になっていることに「座位行動」があります。長時間座り続けている状況が問題視されています。ずっと座り続けている状態は、健康障害のリスクを高めるという研究があります。また少子化が進み学校が統廃合されたことで、スクールバスでの通学も増えています。子どもの日々の身体活動量は、通学時間と相関関係にあるので、通学時間の減少によって身体を動かす時間が減っているのではと気になっています。
 また、これは私の研究ではありませんが、一ヶ所を見続ける機会が増えたことにより、視力が落ちてきたとも言われています。PCなどの画面を見続けると、距離感がずっと一定なので、視力に関係する目の調節する力が落ちるのではないかと思われます。学齢前の子どもたちでもPCやスマホを見ている子が結構いますが、神経系の発達は幼少期の早い段階から起こるので、その時に視点を調整する力がちゃんと育たないと、その後どうなるのか危惧しています。

PCなどの画面を見続けると、距離感がずっと一定なので、視力に関係する目の調節力が落ちる。
┃ ┃
屋外での運動は、遠くを見たり近くを見たりすることが多くなるので、ピントを合わせることのトレーニングになると思います。
そのため、お子さんが幼少期の頃から外で遊ぶこともおすすめします。

  

学生さんたちにはどんな先生になってほしいですか?

 子どもたちと一緒に動ける先生であってほしいと思います。先生が率先して元気に動いているから、子どもたちもその様子を見て、「自分も動こうかな」という気になることが実際にあります。全教科を担当しなければならない小学校の先生の中には、体育が苦手という方もいるでしょう。しかし、お手本の動きが上手くできなくても、子どもたちと一緒に走って鬼ごっこをすることができるような、そのような先生もいいのではないでしょうか。
 また、教員は様々な話題を知っていなければならないと私は思っています。いつもインターネットばかりから情報を得ようとすると、話題が自分の興味のあることに偏ってしまいがちです。子どもたちはそれぞれ違う感性を持っているし、保護者の方々との会話にもどんな話題が出てくるかわかりません。ですから、世の中で話題になっていることや、基礎知識や教養を厚くしておいてほしいと考えています。

  

ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

挿絵03

 「三つ子の魂百まで」ではないですが、私が研究している運動の領域などでも、子どもの頃からの生活習慣は将来的にもずっと続いていくのだとわかってきています。お子さんの将来の健康にも繋がるので、それも考えながら子育てしていただければと思います。親御さんもお子さんと一緒に運動すれば、お子さんの生活習慣はもちろん、ご自分たちの健康的な生活にも繋がっていくのではないでしょうか。
 まずは近所の公園など身近なところで体を動かして、運動の楽しみが得られたらいいのではないかと思います。小さい時はいろいろなことをしてみて、その中で「これをしたいな」というものに出会ったら、スポ少や部活に入ったりして取り組めればいいですね。

掲載年月/2024.05

  

≪ TOPへ戻る

SERIES

絵本といっしょに
ママさんライダー
ぱれまるの部屋
宮城教育大学
子育ての疑問質問
レシピ
ままぱれぽーと
プレゼント