子どもたちの健やかな成長のために、今大人にできること。

通塾率が全国平均と比べて高くないにも関わらず、全国学力・学習状況調査で高い正答率を誇る宮城・大河原町。
そこには自主性を尊重する学校教育と家庭との深い連携、そして10年かけて取り組んできた「おおがわらルール」がありました。
高い学力を支える秘密に迫ります。
何に気を付ければいいかを具体的に提示
大河原町では、平成27年に「おおがわらルール」を制定しました。当時は中学生の間で、時間を問わないLINEやメールのやり取りが増え、「すぐに返信しないといじめにつながるのでは」と不安を抱く子が多く、スマホを手放せない状況が問題になっていました。そこで、各学級・各校で話し合いながらルールづくりを進めたのが始まりです。
平成29年には、そのルールをもとに、子どもと大人がそれぞれ守るべき指針として「おおがわら宣言」を作成しました。単に禁止するのではなく、どんな点に気を付ければよいのか具体的に考える機会になったことが、大きな意味を持ったと感じています。
こうした取り組みを続ける中で、令和4年にはゲーム時間の長さが課題として浮かび上がりました。調査では、小学生の平日のスマホや情報機器の平均使用時間が1.91時間、中学生が2.78時間という結果に。5時間以上使う子も少なくなく、この状況に危機感を覚えていた折、東北大学病院小児科の植松有里佳先生とご縁が生まれました。
長時間のメディア視聴の問題を自分事として考える
大河原町には、家庭・学校・各地区及び関係機関団体が中心となって運営する「明日の青少年を育てる会」があり、毎年「明日青のつどい」を開催しています。令和5・6年には、この会の場で植松先生にデジタルメディアの影響についてご講演いただきました。
植松先生は、長時間のメディア視聴が子どもの成長・発達に与える影響や、「親子の愛着形成が難しくなる可能性」、また県が推奨する「早寝・早起き・朝ごはん」とメディア管理をセットで考える重要性について、わかりやすくお話しくださいました。(先生のインタビューはままぱれ2025年9月号に掲載)
令和6年には町内の学校代表が集まり、9月と11月の2回にわたって「スチューデント・サポーターサミット」を開催しました。第1回では各校の課題を洗い出し、改善に向けたスローガンづくりに取り組みました。第2回では各校から持ち寄った案をもとに、「おおがわらデジタルメディアスローガン」を完成させました。
原案を提出した大河原中学校では、植松先生を招いた講演会を独自に企画し、生徒600名と保護者100名ほどが参加。今も高い意識で、改善に向けた取り組みを続けています。
睡眠や生活習慣は子どものうちから身につけたい
植松先生の助言を受け、過去2年間でメディア使用と睡眠に絞ったアンケートを3回実施しました(表1)。令和7年2月と9月を比べると、中学生のメディア使用時間は1日平均2.84時間から2.69時間に減少し、睡眠時間は7.53時間から7.67時間へとわずかに増えています。ただ、生活習慣の改善は簡単ではなく、継続した取り組みが必要だと実感しています。
前回の講演会では、特に話を聞いてほしい層の保護者の参加が少なかったため、令和8年1月の講演会は、乳幼児をもつ保護者や祖父母の方々など、どなたでも参加しやすい形にしています。周囲の大人が子どもの睡眠や生活のリズムを整える重要性を知る機会になればと思っています。

大河原町の学力が高い秘密とは?
平成29年度には、全国学力・学習状況調査とゲーム時間の関係を調査しました(表2)。ゲームを1日4時間以上行うと、学力が15〜20%ほど下がる傾向にあり、特に中学生で顕著でした。
さらに今年は、小学6年生191名を対象に「全国学力・学習状況調査と睡眠時間のクロス集計」を実施したところ、6〜9時間の睡眠では、睡眠が長いほど学力が高い傾向が見られました。ただし長すぎても成績が下がるため、適度な睡眠時間が大切だと考えられます。
また、メディアの長時間使用は不登校ともリンクしており、ぜひ使用時間を抑える意識をもってほしいところです。
大河原町には学習塾もありますが通塾率は全国平均と比べて高くありません。家庭の蔵書数も特に多い地域ではありませんが、それでも全国学力・学習状況調査では高い正答率を維持しています。これは10年にわたり続けてきた「おおがわらルール」の取り組みの成果でもあると感じています。先生方の努力はもちろん、家庭の協力、そして学校への信頼が、この結果を支えているのだと思います。

スマホを置いて、子どもの豊かな人生に関わる時間を
総務省の調査によると、大人の平日の通信メディア視聴時間(テレビを含む)は336分、休日は366分。子ども家庭庁の調査によるインターネット利用時間は、小学生223分、中学生302分とされています。
対して大河原町では、小学生122分、中学生170分と大きく下回っています。これまでの取り組みの成果として誇れる数字です。
子どもは親の姿をよく見ています。子どもの成長を考えたとき、大人自身もメディアとの距離を少し意識することが必要ではないでしょうか。特に幼い時期には、砂遊びや自然のにおい・手ざわりを一緒に感じながら遊ぶ時間が、子どもの豊かな人生の土台になると考えています。
近年、子ども会など地域の組織が減りつつありますが、1人で抱え込まず、保護者同士が少しずつ繋がりをつくりながら、支え合っていくことも大切だと思っています。
大河原町が掲げるデジタルメディア利用のルール
●平成27年12月
おおがわらルール
午後9時以降は、携帯・スマホ・ゲームを使いません。
●平成29年1月
おおがわら宣言-児童生徒
1.午後9時以降は、携帯・スマホ・ゲームを使いません。
2.使用するインターネット端末にフィルタリングします。
3.相手を傷付けるような書き込みは、絶対にしません。
4.危険なサイトや有害なサイトへのアクセスは、絶対に行いません。
5.トラブルに巻き込まれた際には親や先生に相談します。
おおがわら宣言-保護者
1.子どもたちに、午後9時以降は、携帯・スマホ・ゲームを使わせません。
2.フィルタリング加入100%を目指すとともに、家庭内で、安全利用のためのルールづくりを行います。
3.ルールを守らないときは、必ず注意します。
4.インターネット犯罪等に巻き込まれないように、未然防止に努めます。
●令和6年12月
おおがわらデジタルメディアスローガン
メディア スリー ストップ
1.使いすぎ 2.悪用 3.トラブル












