ままぱれ

里親制度をどこまで知っていますか?

家庭に問題を抱えた子どもたちが
幸せに暮らすために

里親制度をどこまで知っていますか?

「里親」にどんなイメージを持っていますか?
養子縁組をして自分の子として育てること?いえいえ、実は短期間預かる制度もあるんです。
家族や家庭の形が多様化している今、より多くの里親家庭が必要です。たくさんの読者の皆さま、手を貸して下さる方に届くよう、里親支援センターの卜蔵センター長にお話を伺いました。

センター長 卜蔵 康行さん


みやぎ里親支援センター「 けやき」 とは
社会福祉法人仙台キリスト教育児院と里親会である宮城県なごみの会が共同で事業主体となり、宮城県から里親等支援センター事業の委託を受けて事業を実施しています。2019年度からはマッチング業務も加わり、児童相談所と連携した包括的な里親支援業務を行うことになりました。

オンライン座談会に参加した編集員

子どもが安心して家庭のなかで暮らすために

里親には4つの種類があります。

〈 養育里親 〉
家庭での養育が困難になった子どもを自分の家庭に迎え入れて育てる里親
〈 養子縁組里親 〉
養子縁組を前提とした里親
〈 専門里親 〉
虐待や非行、障害などの理由により養育に課題のある子どもを育てる里親。専門的な研修受講など一定の条件があります。
〈 親族里親 〉
実親の死亡や行方不明などで養育できない場合、3親等以内の親族がその子どもに限って育てる里親

 お母さんたちは当たり前のように、自分が生んだ子どもと普通の暮らしをしていると思いますが、様々な理由で自分が生まれ育った家で家族とともに暮らせない子どもたちがいます。ここ数年は虐待による保護がとても増えています。また、保護者の養育能不足、つまり保護者に知的障害があったり、あるいは養育放棄で育てられないということもあります。あとは保護者の方が病気で、短期間ですが施設や里親家庭で生活することもあります。あとは経済的に苦しくて子どもを育てられないとか、子どもを置いてそのままいなくなってしまったなど、様々な理由があります。
 こういった子どものために、実家庭に代わって社会が責任を持ち、子どもが安心安全に生活し、育っていく場を用意する仕組みを「社会的養護」といいます。
施設、あるいは里親家庭で育てられるように、きちっと手当をすることです。広い意味では一般の方が、そういった子どもたちの存在や事情を理解することも支援になります。

信頼できる大人の存在は生きる力に繋がる

 保護された子どもたちは児童養護施設や乳児院などの施設か、里親やファミリーホーム(※)などの家庭で生活することになります。仙台市と宮城県で登録している里親さんは350世帯くらいで、県内ではだいたい600人の子どもたちが施設や里親家庭・ファミリーホームで生活しています。日本は長い間施設偏重で、10人の子どもがいれば9人は施設、里親家庭・ファミリーホームで生活する子どもは1人くらいでしたが、今は約2割の子どもたちが里親やファミリーホームなどの家庭で生活しています。宮城県は全国平均より高く、昨年度で38%くらいです。
 里親制度というのは、里親になる家庭が自分の家庭を子どものために提供して、子どもの育ちを守り、子どもの未来に寄り添う大切な制度です。子どもがしっかりと社会に出ていけるように、あるいは実家庭の状況が整えば、そのご家庭に子どもを還して、家庭生活を送って大人になっていけるように、養育を応援するための制度です。どのくらいの期間、里親の家庭で暮らすのかというと、親の病気などで実家庭に戻ることを前提として、短ければ1~2ヶ月などの短期から、高校卒業や自立まで10年以上に渡って長期の場合もあります。
 里親制度の利点は、「家庭での当たり前の生活の保障」ということ、そして「特定の養育者との変わらぬ愛着形成」です。里親家庭のご両親としっかりと愛着関係を作って、自分自身が大切にされていることを実感することによって、自尊感情を高めていくことができます。自分の親ではなくても自分を大切にしてくれる存在があることで、自己肯定感や自尊感情を高めるという大きな利点があります。信頼できる大人の存在というのは、生きる力にも繋がります。
※ファミリーホーム:里親のように児童を養育者の家庭に迎え入れて子育て養護を行う家庭養護のこと。

里親になるのはどんな人?

 ではどんな人が里親になっているのかというと、ここ何年かの傾向としては、不妊治療をしたけれども子どもができず里親になる方が非常に増えてきています。特別養子縁組をして、実子として子どもを育てたいという方もいらっしゃいますし、養育里親として法的な親子関係を持たなくても子どもを育てたい、子どものいる生活をしたいという方が半数強います。また、実子がいるけれど、福祉的な視点で家庭を提供したいと里親になる若い方々も増えてきていますし、元々一定数いらした定年に近くなって実子は自立し、子育てに一区切りついたので社会に恩返しをしたいと里親になる方々もいます。


 里親になる人は、特別に福祉的な思いを持っている人ということではありません。自分の子育てに余裕ができたので、子育てを応援したいと考えている方であったり、10何年も育てていくのはちょっと難しいけれど、短い期間だったらできるかなと考える方。こういった方にも考えていただければと思います。短期間に預かる里親、あるいは一時保護の受け入れなど、いろいろな里親の在りかたが考えられるので、自分ならこういうことができるかな、里親をやってみてもいいかなと思っていただければと思います。

堀 川:里親制度は養子縁組をして、養子が自立するまで面倒をみるものだと思っていましたが、選択肢がいろいろあるので、やってみようかと思う人もいらっしゃるんじゃないかと思いました。
小 泉:不本意にお子さんを手放し、育てられない親の心のケアも大事だなと思いました。
ト 蔵:それは児童相談所や、市町村の主管課になります。施設に子どもを預けている親というと、どうしても親に冷たい視線を向けられがちですが、そういった親御さんの理解や支援もしっかりやっていかないと、SOSを出しにくい、生きにくい社会になってしまいます。
佐 藤:お話を伺って、短期の預かりや一時的な保護の里親という制度もあることを全く知らなかったので、そういうことをたくさんの人が知れば、笑顔になるお子さんもたくさん増えるんじゃないかと。ホームステイのような感覚で、受け入れる側も「もうひとりのママだよ」みたいに、感覚が変わってくればいいですね。
ト 蔵:実際に里親さんのところで預かって、「あなたを育てたママは3人いるんだよ。本当に産んだお母さん、施設で育ちを守ってくれたお母さん、そしてうちに来て、わたしが里親のお母さん」とお子さんに話している里親さんもいます。だからそういう感覚でもいいのかと思います。
山 本:非行などがある子を受け入れるのは大変だと思うのですが、里親になる方は、そういう施設の仕事をしている人なのでしょうか。
ト 蔵:専門里親というのがあります。これは、特別に施設での勤務経験などは必要なくて、里親として一定の経験を積んだ方が、専門里親になる研修を受けてなります。それなりに大変なお子さんも中にはいますが、普通の家庭にも預けられています。
梅 田:私が里親に興味を持ち始めたのは7~8年前です。当時熊本に住んでいて、赤ちゃんポストがある慈恵病院を知ったからです。地元でも賛否両論ありますが、院長さんが「いろいろ意見はあるけど、とりあえず命を救うことを考えている」と言っていて、なるほどなと思いました。
津 田:「子どもひとり育てていく」という責任の重さを考えると、なかなか手を出しにくいと思いながらお聞きしたのですが、「子どもは産む気はないけど」「結婚する気はないけど」子どもがほしいという方々にも里親制度の情報が届けば、一人でも多くの子どもを受け入れる家庭ができるなと思いました。
ト 蔵:一般的に里親制度というと養子縁組の制度と思っている方が多いんですが、実際には普通の養育里親の方が圧倒的に多いんです。長期間ばかりでなく、短期間預かる里親さんも必要なので、入り口としてはそこから入っていただければと思います。
宮 腰:VTRで結構年配の方が赤ちゃんを育てていてびっくりしました。ご近所にはどう話して育てているのか気になりました。 
ト 蔵:今はもうほとんどの皆さんはオープンにして、自分は里親として子どもを預かって育てていると公言する時代になっています。里親をしていて何か困ったことがあれば、児童相談所が相談に乗っています。「けやき」でも対応をしています。またレスパイトケアというのがあって、疲れた時にはちょっと一時的に子どもを預けたりする制度があります。
子育てで孤立しないようにというのは普通の子育てと一緒です。
岡 本:今は本当に他人の子育てに干渉しなさ過ぎるので、私はもっと風通しのいい家庭になったらいいなと個人的に思っています。里子というカテゴリーだけでなく、普通の子どもたちもいろんな大人を知ったほうがいいと思うし、いろんな家庭のテイストを知ったほうがいいと思っています。さっきの「3人のママ」のひとりに自分がなれるんだったら、喜んでなりたいなと、すごく思いました。
編集部:子育てをする責任感という重圧プラス、経済的な部分もあると思うんですが、そういった経済的な支援はあるんでしょうか。
ト 蔵:里親はボランティアではなく、どちらかというと有償ボランティアのようなものなので、「措置費」というのですが自治体から子どもの生活費が出ます。また義務教育の間は給食費は実費で出ますし、入学の際には支度金や、修学旅行があればその費用も出ます。医療費の負担はありません。それとは別に、里親手当というのがありますので、里親が経済的に抱える負担はそんなにありません。里親制度のパンフレットには、そういったことも書いてありますが、目にする機会がなかなかないので、伝わっていないのかと思います。潜在的に里親を考えている方に、いろんな形の里親があるということがもっと伝わればいいなと思います。

お話を聞いて

 里親制度は、何よりもお子さんが家庭での当たり前の生活を保障され、親御さんとの関係を作りながら幸せに暮らすための制度です。「自分が」子どもがほしいからではなく、まず何よりもお子さんのことを考えて、短期からでも里親として関わる方が増えてくれるといいですね。それが難しくても、「里親制度ってこうなんだよ」ということを、ママ友や必要としている方へ伝えていただけると嬉しいです。

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