ままぱれ

サッカーや体育を通して国の文化や学びの在りかたを考える。

サッカーや体育を通して国の文化や学びの在りかたを考える。

現在、絶賛改修工事中の宮城教育大学キャンパス。仮住まいの研究室にお邪魔すると、昨年急逝したマラドーナの、雑誌“Number”追悼号のポスターや書店のスポーツコーナーと見紛う本棚が。単なるスポーツではなく、その国の文化や生活、哲学としてサッカーや体育を考察する先生にお会いしてきました。

先生の授業・研究について教えてください

 1年生前期の「教職実践体験演習」 で、学習指導要領にある学校体育がどういうものなのかや、同じ体育講座の沼倉先生と分担して「小学校体育」の授業で、ICTの活用や学習評価について教えています。体育の授業でのICTは基本的には動画の撮影ですが、それをどう活用していくのかを、これまでの授業スタイルの良かった部分を振り返りつつ、さらに良くするにはどうしたらいいかを考えています。
 自分の研究のテーマはサッカーがメイン。サッカーという競技そのものについてと、それをどう指導するのかの2つを扱っており、どうしたらみんながサッカーを楽しめるか考えるのが僕の仕事です。

尚絅大学(熊本)で教えていた時、保育者になる
学生を育てるうえで、力を入れていたことは。

 授業は子どもの健康の指導法だったのですが、いろいろなフィルターをかけながら多面的に物事を見ることに力を入れました。また、ただ知識を得るだけでなく、「自分はどう考えるのか」を文章にすることを大事にしました。目の前にいる子どもを見る時に、見方によってその像は変わってくるので、ほかの人と意見の相違も出てきます。そういった時に自分の考えをまとめながら、ほかの人の観点を探っていけば自分の見方が豊かになります。
 卒業して保育所や幼稚園に勤めれば、日誌や連絡帳を書くことになります。その時に自分の見方が主観的になり過ぎていないか慎重になる必要がありますし、お母さんが思っていることを文章から読み取る力も必要になります。会話でのコミュニケーションもそうですが、意図していることをきちんと伝え合う技術は大切ですね。

サッカーとの出会いについて

 Jリーグの開幕が小学1年生の時で、そこからサッカーが好きになり2年生からスポーツ少年団に入りました。海外のサッカーを見始めたきっかけは、日本代表が初めて出場した1998年のワールドカップ・フランス大会です。親が買ってきてくれた世界のスーパースターを特集している雑誌や、ゲームの「ウイニングイレブン」で世界にはすごい選手がいることを知って興味を持ちました。当時中田英寿選手が移籍して、セリエA(イタリアのプロ・サッカーリーグ)が日本でも放送されました。ポジションは中田と全然違いますが、当時ユヴェントスに在籍していたデル・ピエロが今でも好きです。Jリーグが始まった頃はヴェルディのファンでしたが、今は自分がどこに行っても、地元のコンサドーレ札幌の試合結果を一番最初に見ますね。

子どもたちがスポーツをする上では、
どんなことが大事でしょうか。

 大学に入ってから少年団のコーチを始め、博士課程に進んでから、「北海道ハイテクアスリートクラブアカデミー」という、恵庭市の地域スポーツクラブのサッカー教室でコーチをやりました。そこで初めて、小学1年生以下を指導する経験をしたのですが、これがなかなか大変でした。4歳からなのですが、連れてきてくれたお母さんと離れただけですぐ泣いてしまったり、そういう子どもたちをどうやってサッカーに向かわせるか(笑)。4~6歳くらいの子どもたちは、まだサッカーのことはあまりわからなくて、ボールを蹴るのが楽しい子とボールを持っている(取られたくない)のが楽しい子の2通りなんだと思いました。持っているのが好きだと、ドリブルが上手くなったりしますね。久保建英くんや中井卓大くんなど若い選手の映像を見ると、ボールに触れている時間がすごく長いんです。
 今の子どもたちは、厳しくして伸ばすというより、ゆったりした空間を作ってあげたほうが伸びていくような気がします。彼ら彼女らは、集中力を高めなければならない時や必要な時には、自分たちで考えたり、YouTubeなどを見て学ぶ力があるので、僕たちは煽るというか、力を出せる言葉がけを考えてあげればいいのかなと思います。サッカーのある空間にいることが楽しくなければ、裾野は広がらないですからね。

これからやってみたいことは?

 研究者として「教育って何だ」とか「学校って何だ」ということを、もっと学んでいきたいと思います。今は「民主主義って何?」ということを考えています。商業化しているオリンピックと、古代から受け継がれてきたオリンピックの精神はどういう風に変質したのかなど、そのあたりのことも含めて考えていく時期なのかなという気がしています。サッカーは僕のライフワークですが、そういった知識や考え方を自分の中で広げていくことで、サッカーの捉え方も変わってくるかもしれません。僕が今見ているサッカーの世界は、戦術や技術の部分くらいです。でも海外では、サッカー文化は生活の一部に食い込んでいます。イベントとして一時的に盛り上がるのではなく、例えばベガルタや楽天を見に行くことが普段の生活の一部になることが、ベガルタや日本のサッカーを強くするうえで必要なのだと思います。

ままぱれ読者にアドバイスをお願いします。

 なかなか外遊びもできず、親子ともに運動不足になっている方もいらっしゃると思います。お父さんでもお母さんでもいいですから、大人の体をお子さんがよじ登るとか、そこをぐるぐる回転するとか、そういう遊びでも面白いと思います。またタオルケットを大人に持ってもらって、そこにハンモックみたいに乗るとか、屋内でもできることはいろいろあります。サッカーボールを蹴らなくても、グラウンドに立つサポートをしてあげるなど、これは結構難しいですが、自分でできるようになったという感覚を作ってあげることが、幼児期の子どもにはとても大事かなと思います。
 今の状況がどのくらい続くかわかりませんが、「触れる」という経験が不足する事態が今後もまだ予想されるので、1日1回くらいギューッとしてあげるのもいいかもしれません。そういうことがすごく嬉しい時期というのは、人生の中でも限られていますが、幼少時に泣いていた時に抱きしめられた記憶や経験は、無意識のゾーンで残っていくものです。そういうことが、人に優しくできる心を育てていくのではないかと思います。「人は優しさを受けた分しか、人に優しくできない」とうちの嫁さんがよく言うのですが、優しい子になってほしければ優しく接することが大事だろうし、自立した子になってほしければ、自分でできたという経験をさせることが必要なのかなと思います。   

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